【醸界タイムズ】2010年8月6日発行
『熊本産を‘食らう’~日本酒、語りで楽しむ~』 地元の酒屋酒会を企画
【熊本】話を肴に、熊本産の日本酒を楽しむ。そんな切り口で、県産酒の魅力を伝える酒会を、熊本市の酒販店「酒蔵惠之助」の立川惠之助さんが企画している。かつては当たり前だった、地元の酒や食べ物を‘食らう’のがテーマ。暮らしの中に、他県産や外国産の酒や食品があふれる中で、地元くまもと産に目を向けようと呼びかける取り組みだ。薀蓄(うんちく)に富む酒にまつわる話が、県産酒への関心を高める愛着を抱かせるエッセンスになっている。
7月23日、酒会「話しを肴に『く~かい』で飲む会」は3回目の開催を迎えた。運営にあたっては、人と人をつなぎ繁盛提案を行う「あんでるせん(案出仙)」事務局長の永島史浩さんが担うところが大きい。永島さんはかつて、焼肉店を経営し、そのときに立川さんと出会い、酒について多くを学んだ。美味しい燗付けの仕方や酒席での礼儀作法なども教わり、日本酒に日本文化を感じた。その日本酒の魅力を何とか伝えようと、フランス料理と共に楽しむ酒会の提案なども行ってきた。
話を肴に飲む会は、元々は、熊本酒造組合が県と共同で開発した日本酒の統一ブランド「熊本純米・さゆる」が今年3月、県内10社の蔵元から発売されたのを期に開いたものだ。あらためて県産酒の魅力に触れてもらおうと、さゆるの飲み比べから始め、すでに県下一蔵の日本酒を紹介。今後も一蔵ごとの酒を楽しむスタイルで会を継続していきたいという。
会場の「く~かい」(熊本市新市街)は、地元の製粉会社が経営するうどん屋。繁華街の一角にあって、夜は米粉を使った唐揚げなどの料理も提供している。日本酒の原料は勿論お米。コメつながりで、「肥後の米菓 木村のあられ」で知られる菓子製造販売会社、木村(本社・熊本市)も協賛。同社の木村光男社長も駆けつけ、あられも肴に酒を楽しんだ。
3000円の会費で、当日は約20人が参加。日本酒は瑞鷹(熊本市)が登場。同社営業マンも同席し、商品説明を行いながら、参加者との交流も深めた。酒は吟醸酒や純米酒、純米にごり酒、そして本醸造「墨守」の4種。酒蔵惠之助は、県産の日本酒、焼酎の魅力や価値を伝え、地元での愛飲拡大のために県下酒販店が連携し活動する「熊本の酒推進委員会」のメンバーで、「墨守」は約40店の会員酒販店だけで販売されている。
酒会の軸となる立川さんの話は、歴史をたどり、酒質への持論も展開する踏み込んだものだった。熊本県を日本酒銘醸の地とした酒の神様、野白金一氏、その氏と深い関係にあった瑞鷹・・・等々。4種の飲み比べをしてもらいながら、吟醸酒、純米酒、本醸造酒の造りについて解説。飲みやすい酒、好きな酒はどちらかを問い、吟醸という名や、幻という銘柄に振り回されることなく、「理屈で飲むのではなく、味で飲み、自分の基準で美味しいお酒を見つければいい」と投げかけ、参加者の先入観を払しょくした。
熊本市内で30年近くスナックを経営する女性は、「今日のお話は、10人中9人が知らないこと。日本酒のことや瑞鷹のことがとてもよく分かりました。これからは熊本の酒の良さを噛みしめて飲めますね」と話した。九州財務局に勤める男性は、「これだけ地元の酒を盛り上げようとしている地域は、他県にはないと思う。地元を大事にしようとする熱意を感じる」と酒会参加の感想を述べた。
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